『大好き！クサイさん』

クサイさんは、公爵夫人という犬と激臭をお供に
ベンチに居をかまえている路上生活者。
あまりの激臭に、人が逃げ去るほど。

私立学校に通うクロエは、
そんなクサイさんのことが気にずっと気になっていた。
何のとりえもなく、空想にふけったり、
お話を書いたりすることが大好きなクロエ。
お父さんは自動車工場で働いていて、
お母さんは下院議員に立候補すべく
せっせとその準備に取り組んでいる。
妹のアナベルはおけいこごとで毎日忙しい。
お母さんはアナベルばかりかわいがっている。
学校ではいじめられ、家でも居場所がない、
そんな退屈な毎日を送っていたクロエは
ある日、思い切ってクサイさんに
話しかけてみることに！

クサイさんの思いがけなく丁寧な話し方や
持ち物や言動に、クロエの空想がふくらみます。
「もしかしたら、
クリケットチームのキャプテンだったのかも？」
クサイさんて、いったい何者？
それは読んでのお楽しみ！

「路上生活者にもそれぞれ、
そうなった事情があるんです」
というクサイさんの言葉は心に沁みました。
人は経歴や境遇など無視して、
今ある姿で他人を判断してしてしまいがちです。
でも、そこには必ずそうなった理由があるはず。

クロエの家族たちはクサイさんに、
失ったものや失いかけているものの
大切さに気づかされます。
絵も雰囲気が出ていて、思わず笑ってしまいます！
ちょっぴり切ないけどユーモアがちりばめられていて

おもしろい、大人でも子供でも楽しめる児童文学です！

大好き!クサイさん